うちゅうのくじら

そりゃあもういいひだったよ

かわいいほしぶどう

 

  • ほしぶどう事件

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何度か過去に女性を本気で怒らせたことがある。

そのうちのひとつに、女性のちくびをつまみながら、「干しぶどう」としょうもないことを言ってしまったということがある。確かにそれは今朝方に食べたぶどうパンに点在していた干しぶどうと瓜ふたつだった(だからと言って、それを言葉にしてはいけない)

私としては「干しぶどう(みたいでかわいい)」というニュアンスだったが、そんなことは通じるはずもなく、彼女は数秒硬直したのち烈火のごとく怒りだした。びっくりするぐらいキレ味のいいビンタをくらったのを覚えている。

そもそも干しぶどうはかわいいという認識を世界広しといえど私以外に抱いている人間などそうはいないだろう。

 

  • なぜかわいいか?

ちなみに干しぶどうがなぜかわいいかという説明をすると、生まれて初めて「ほしぶどう」という言葉を聞いたとき、とっさに「星ぶどう」というファンシーなイメージが私の頭の中に浮かんだからだ。

お星さまをかたどったぶどうたちが、みずみずしく光り輝いているイメージだ。それは宇宙の片隅の惑星でひっそりと運営されているちいさな農園の特産物だ。おじいさんとまごが毎日せっせと世話をしている(おじいさんの息子は地球で商社マンをしている。年に1回だけおじいさんの星に帰ってきては仕事の愚痴をこぼしてまた帰っていく。「せわしないやつじゃ」とおじいさんは息子の背中を見送りながらそうつぶやく。「なあ、モリオ?(まごの名前)」とおじいさんはまごに同意を求めるが、孫は父の背中をみつめたまま何も言わない。ある意味おじいさんより、まごは老成している。(物事をより解像度高くかつ俯瞰的にみれるのがこの世代の特徴だ。自己と現象の切り離しが上手い)父がこの星にとどまらないのは仕事だけではないことを察している)

だから私の中では「ほしぶどう」の「ほし」は「干し」ではなく「星」なのだ。

決して、干からびていて、しおしおで、枯れている、というイメージではなく、むしろその逆だ。彼女のちくびの名誉のために言うが、決して彼女のちくびは枯れてなんかいなかった。

もちろんこんなことを彼女は知っているはずもなく、(知っていたとて理解されるかは難しい)だからこそビンタされたわけだし、それは至極まっとうな反応であったと思っている。

 

  • その後

そのとき私は大学生で、その子とは半同棲状態だったが、同棲が解消され、一度別れるという事態にまで発展した。(ほどなくして元のさやに納まったが、何度かそういうことが繰り返され、卒業と共に別れた)

 

私は今でも無神経な一言をぽろっと言ってしまうような悪癖があり、そのたびに相手を不愉快にさせている。本当にどうしようもない、むしょくの40歳だ。

しかし、仮にあのとき、星ぶどうの説明をしていたら彼女は納得してくれただろうか?

そんなことを最近よく考える。